双六と文学 |
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■俳句に詠まれた「双六」
●絵双六と俳句
正月の子供の遊びの一つ。一枚の紙面に多くの区画を描き出し、数人にて順次に一つの骰子を振り、その骰子の出た目だけ「振り出し」から区画を進み、それを繰り返して、早く「上り」の欄に達した者を勝ちとする。
奈良朝以前に中国から伝来した双六は、盤上の区切りに黒白の石を並べ、一本の筒に入れた骰子二個を盤上に振り出して競う別種の競技で、 今日はほとんど行われていない。それよりはるかに後に起こった絵双六を現在は双六といっているのである。
(角川書店 「俳句歳時記 新年の部」より)
子供等に双六まけて老いの春 高浜虚子
芋賽の大いなるかなや絵双六 八木絵馬
双六や君が止まりに我も来し 安斎イ桜子
吾子等はやくはしきかなや絵双六 中村汀女
双六の賽の禍福のまろぶかな 久保田万太郎
双六の花鳥こぼるる畳かな 橋本鶏二
ばりばりと附録双六ひろげけり 日野草城
仲見世の昼の灯あはし絵双六 古賀まり子
双六の賽ころがりて袖の上 山口波津女
双六の賽掌に暖め家長の座 保知券二郎
● 双六・・・三省堂「ホトトギス新歳時記 改訂版」(編者:稲畑汀子)より
盤上の遊戯として起源は古く、遣唐使がもたらしたものといわれている。盤上に12画を区切りこれに黒白の石を並べ、賽2個を振って石を進め勝負を争うが、この双六盤はその後廃れ、その変形ともいえる絵双六として、浄土双六、陞官(しょうかん)双六、道中双六、役者双六などが中世、近世のころに盛んに行われていた。現在、双六といえば子供たちの遊びの絵双六のことである。
双六をしてゐるごとし世はたのし 国広賢治
双六のとびたる賽にみんなの眼 藤本朱作
双六の正しき折目敷き展べし 島田みつ子
出世して上がる双六ふと貧し 後藤比奈夫
双六の中の人生にも負けて 大槻右城
祖母の世の裏打ちしたる絵双六 高浜虚子
● 双六・・・成星出版「現代歳時記」(編者:金子兜太、黒田杏子、夏石番矢)より
双六は中国から伝来したものだが、現在、子供たちが遊ぶ双六は絵双六といい、中国式が変形したものである。さいころを振って、その目の数だけが駒を進め、早く上がった者が勝ちとなる。
仲見世の昼の灯あはし絵双六 古賀まり子
子に負けてやる双六のむづかしく 嶋田一歩
絵双六雪の匂ひのする夜なり すずきりつこ
双六をあがりたる手で猫掴む 大石雄鬼
ちちははの愉しき山を絵双六 関戸靖子
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